通備拳法の起源は、清代の道光・咸豊年間に河北滄県の学者である潘文学が唱えた通備学説にまで遡ります。その後、学説を受け継いだ李雲表、黄林彪、馬鳳図、馬英図らが充実・発展させた結果、通備拳法という一大流派が形成されることになりました。
通備拳法とは、次に挙げるような趣旨に基づいて成立した武術流派です。
通神達化
拳法の真髄を悟り、自由自在に応用すること。
備万貫一
様々な武技を備え、それらすべてが「通」の拳理で貫かれていること。
理象会通
拳理の理解と、技法の会得を両立すること。
体用具備
健やかな体と、優れた武技を共に備えること。
通備拳法の特徴
身体の大開大合(大きく広げ、小さく縮む)を強調し、急激な反転を伴った変化が多く、剛柔の動きを兼ね備え、その技法は長打(遠距離からの打撃)を中心としながら、短打(投げ技や関節技など)を兼ね備えています。
十路弾腿
十路弾腿は各種の手型・手法・歩型・歩法・腿法・身法が過不足なく含まれる通備拳法の基礎練習です。
十二大趟子
十二大趟子はかつて秘伝招法と呼ばれた技法であり、通備拳法の特徴である開合・呑吐・起伏・擰轉・虚実・剛柔などを含む各種攻防技術の訓練法です。
通備一路
劈掛拳あるいは抹面拳と呼ばれます。全身を伸縮・起伏させつつ勢いよく両腕を旋回させる構成は、優れた全身運動であり、体力を養い、筋力と柔軟性を強化します。
通備二路
青龍拳あるいは掛拳と呼ばれます。あたかも龍のように胴体を自在に動かして運動する構成は、練習者に身法の熟練をもたらし、精緻かつ繊細な運動能力を育てます。
通備三路
飛虎拳あるいは挑拳と呼ばれます。翼を備えた虎の力強さと俊敏さを要求される構成は、練習者の身体能力全般を向上させると同時に、敵の心胆を寒からしむる猛威を養います。
通備四路
太淑拳と呼ばれます。拳打を中心としたシンプルな構成は、通備独特の幅の大きな全身運動を、徒手格闘に必要な敏捷かつ緊密な運動にまとめあげる役割を果たします。
風磨棍
大風磨棍と小風磨棍の二種があります。ことわざに「拳棍は諸芸の本源」と言われる通り、棍術は非常に重視されています。棍を振り回すことで生じる風切り音が凄まじい豪快な棍術です。
通備刀
六合刀と劈掛刀の二種があります。技法は簡素で威力は大きく、短兵(片手武器)の重要な基礎を学ぶことができます。
通備剣
中国伝統剣術の中でも長い歴史を持ち、両刃を活かした多様かつ素早い動作が特徴で、使用する刃を巧妙に入れ替えながら攻防の技法を表現する独特な剣術です。通備剣を練習することで、中国剣術に特有の剛柔や虚実、精巧な身体操作などを身につけることができます。
倭刀(苗刀)
明代に日本刀術が中国の軍隊・民間に導入されると、徐々に変容して中国化され、独特の倭刀術が形成されました。清代に至って倭刀術はさらに広範な普及を見せ、長くて細身の刀身を持つ日本刀様式の刀は苗刀と呼ばれるようになりました。倭刀術を通じて日中両国の刀剣技法が融合した貴重な武術を学ぶことができます。
鞭桿
鞭桿術は中国西北部地域において発展してきた伝統武術の一種です。鞭桿の長さは約120~140cmで携帯に便利です。鞭桿術の稽古を通じて協調性、敏捷性、俊敏かつ活発な体幹の変化、素早い足運びなどを養うことができます。
通備拳法の一般基本功
溜腿勢、單劈手、双掛掌、反滾臂、撲掛、烏龍盤打などがあります。溜腿勢は下半身の力・柔軟性・移動能力などを鍛え、他は上肢の劈・掛および体幹の吞吐・開合・起伏・擰轉などを練習する方法です。